「美園サイクリング&ウォーキング2016」を振り返る~タニタヘルスリンク社長 インタビュー~(前編)
「みその“健幸”度向上プロジェクト 実証実験」の一環として、昨年夏から年末にかけて実施された「美園サイクリング&ウォーキング」。専用の白い活動量計をご覧になった方も多いのではないでしょうか?今回は実証実験の仕掛人ともいえる、株式会社タニタヘルスリンクの丹羽隆史社長にお話を伺いました。
Q:まず最初に「美園」が他の自治体と比べて進んでいると感じられる点はどこでしょうか?
さいたま市さんの「先進的な試みをこの街で実現したい」という想いに対し、多くの企業が集まって「健康的に暮らせる」「環境にやさしい」「先進的な暮らし」などのアイデアを出し合っているところですね。「行政主導で民間はサポート」という形ではなく、みんなが知恵を絞り良い街を作ろうとしている、これは「美園」の特徴だと思います。
Q:今回のプロジェクトで「さいたま市からの希望」として、何か具体的なものはあったのでしょうか?
この専用活動量計には「自転車モード」がついています。自転車に乗っているときの活動量を計測できる機能です。「美園」は全て徒歩移動するには広いので、さいたま市の清水市長から「目的地まで、車ではなく自転車で移動して欲しい。タニタさん、はかれるような機器を作ってくれないか」とご要望をいただきました。この「自転車モード」はこのために開発しましたので、「美園」での試みが「全国初」となります。自転車に乗ると、楽しく運動して、移動できて、消費した活動量についてはポイント付与されてインセンティブも得られます。これは大きな特徴かな、と思っています。
Q:なるほど、「美園」はまさに「サイクリング & ウォーキング」にぴったりの街だったのですね。
そうですね。実際に私も歩いてみたのですが、確かに徒歩だけで移動するには広い街だな、と感じました。ですから「美園」の方々には「見沼田んぼ」のような自然豊かな場所や風光明媚な場所と、ショッピングスポットを自転車で行き来していただき、そのスポットに着いたら、ぜひ歩いてほしいな、と。今回の試みを発展させれば「美園」に新しく住まう方が、街の古き良き場所を楽しく回っていけるようなマップであるとか、サイクリングロードもできるかもしれませんね。近くの史跡を回ってもらう「サイクリング&ウォーキング」のプランなども良いかもしれません。昨年の実証実験はその第一歩だと思っています。
Q:昨年度のプロジェクトには、やはりご高齢の方の参加者が多かったのですか?
他の自治体さんの場合は60代後半がボリュームゾーンなのですが、美園では違いました。男女比は6対4ぐらいで女性が多く、年齢層は40代が多いというのが特徴でした。若い方が多く住まわれるようになって、「これ何だろう?面白そうだな」と、積極的に新しい事業に興味や関心を寄せていただけたのだと思います。
Q:最も成果があったところはどんなところでしょうか?
前提として「美園」は移動手段は車が多く、都心と比べるとあまり歩く習慣のない車社会でした。ところが、参加されている方々の1日あたりの平均歩数はプロジェクト前とピーク時では1,000から1,500歩くらい増えていたのです。この取り組みをきっかけに運動習慣が付いたのかな、と思っています。また、歩く習慣が増えたからか、高血圧だった方がかなり減ったというデータも取れています。高血圧、生活習慣病の方々に対して、何もしないで血圧を下げるというと、血圧降下剤を飲むことになりますが、生活習慣を変え、食生活を見なおし、運動習慣を付けることで改善されたということですね。イオンモールさんの中のヘルスステーション(住民の方がプロフェッショナル仕様の体組成計や血圧計で健康チェックを行い、その結果に対して健康相談を受けられる場所)も、よく活用されていたようです。
Q:ヘルスステーションというリアルな場が効果を生んだのでしょうか。
やはり、実際にはかれる場があって、そこに専門家がいて、はかった情報に対してちゃんとアドバイスをしてもらえる。これは大きいです。実際に、そのアドバイスに基づいて、必要なものをその場で買うということができるというのは、非常に意味があります。今回は、地域の方々と行政の施策とがうまくコラボレーションできたという、一つの成功例なのではないかと見ております。
Q:では次に「データ」ではなく、参加者からの「反応」で、印象に残っているものはございますか?
限定100人の方のみに配布した裏側にWAONのチップが入った活動量計(※)ですね。こちらは全国でも「美園」だけで配布されたもので、活動量計自体をWAONカードと同様に使うことができます。しかし、実証実験が終わったあと、利用量を確認したところ、あまり使っていただいていなくて。実際にウォーキングやジョギングをする際に「財布を持っていかずに、活動量計を首からぶらさげて、イオンモールに寄ったら、これでお買い物もできる」というような使い方を想定していたのですが、思ったほど利用されていなかった。「電子マネーはカード」という意識が強く、なかなか浸透しなかったようです。これは反省材料です。
(※昨年度の実証実験は終了していますが、WAONはそのまま利用できます。)
丹羽社長には、今後の展開についてまだまだお話を伺いました。後編に続きます。