“美園人”の今をお届け 「美園ファーマーズ倶楽部(MFC)」
美園ファーマーズ倶楽部(以下MFC)は、体験農業を通じて、人と人とのつながりを深め、心と身体の健康を保ち働くことや生きることでより充実感を感じることで幸福感が高められるようなコミュニティづくりを目指されています。
今回は、美園ファーマーズ倶楽部のコアメンバーの方々にインタビューをしてきました。
介護を通じて実感した、野菜作りの大切さ
見沼田んぼで、主にファミリー層向けに体験農業をしているMFCですが、このような活動をしようとしたきっかけは、代表の高田靖子さんの介護体験でした。
「両親を25年程介護してきた中で、2人ともかなりの高齢になり、喉の力が弱まり食事が取れなくなっていた時、野菜スープで命をつないでいた経験から野菜の力の素晴らしさや大切さを実感しました。その時、これからの超高齢化社会には野菜が必要だと考えて農業をやろうと強く思ったのです。」
野菜づくりを始めるために相談した知人が、さいたまヨーロッパ野菜研究会(以下ヨロ研)のメンバーの方でした。その方に野菜栽培指導を受けながら見沼田んぼ付近に畑を広げるうちに生産者の高齢化や休耕地の増加の現実を知ることになりました。そのような社会課題の解決のために自分たちが何ができるのかを仲間(小林規男さん、関根隆文さん)と考えてMFCを立ち上げました。
小林さんとは、元々NPOコミュニティの仲間同士でしたので声をかけました。また、関根さんは祖父の畑が休耕地であることから同じ問題意識をもっていましたのでともにアイデアを出し合い現在のMFCを築いてきました。、昨年のビジコンinさいたま2020では、関根さんが代表で発表し、審査員特別賞やイオンリテールをはじめとする複数の協賛団体賞を受賞しました。
人がつながる農体験で、みんなの幸福度を高めたい
現在は事業展開でいうと第1フェーズ。「まずは体験農業のような形で、多くの人に農業を知ってもらい、人と人とのつながりを高めるコミュニティ」ということを目指して展開しています。「ちょこっと農業体験」として、1回のスポット体験、3回の体験(種まき、栽培管理、収穫)、そして半年間で季節の野菜栽培ができるファミリープランを用意しています。
MFCの体験農業が他と一味違うのは、農業以外の体験や様々な学びの場を提供している点です。代表の高田さんご自身が、人材教育やポジティブ心理学に携わっている大学の研究員でいらっしゃいます。農作業をただするだけでなく、子育てに活かしたり、成長する楽しさや喜びを体験してもらうことも意図しています。
「実際、20~30代のお父さんお母さんで、子供は幼児という若いファミリー層がとても多く、自然に触れさせたい、様々なことを自分の手で体験させたいという子育てのニーズと体験農業はマッチしているのだと思います」
食品ロスの解決にもつながる、農家とのマッチング
他にも関根さんを中心に進めているプロジェクトがあります。それは「体験農業をしてみたい人と農家とのマッチング」です。現状、農作物はたくさん作っていても人手不足や高齢化でそれを取りきれないという農家さんの現状があります。せっかく豊作であっても収穫されず腐らせて無駄にしてしまっている場合も多いのです。
一方で、畑で収穫体験をしてみたいという人も多く、そういう人にもっと気軽に農業に触れてもらうために、その両者をマッチングさせるプラットホームである『Papurika(パプリカ)』を今年中にリリースする予定だそうです。
「収穫時期になったら収穫体験したい人を募集し、収穫作業をしてもらう。農家さんにとっては作物を無駄にしなくて済むし、体験した人にとっては新鮮なお野菜を持ち帰れる。双方ともハッピーになれます」。
体験農業を運営したことがない農家さんにとっては少しハードルが高い面もあり、そこにはさまざまな課題があるそうです。そうした課題に対して、市内にレストハウスとしての拠点(Mハウス)を設置し、サポート体制を強化して地域に根差した活動へと注力しています。そこでは、多くの人に利用してもらえるようなオープンな場として今後も活用していきたいと考えています。」
都会からのアクセスも抜群、可能性に満ちた見沼田んぼ
首都圏で最大規模の広さを誇る見沼田んぼの印象についても伺ってみました。「新見沼大橋有料道路近くの『浅子ファーム』は、景観の素晴らしさに惚れ込み土地のオーナーさんにお願いをして農園の一部を使わせて頂くことになりました。そこには、ヤギや鶏もいて動物と触れ合うことができたり、見沼用水路のザリガニやアメンボウなど子供たちが楽しめる場だと思いました。」
また、都会からのアクセスが良いのも、見沼田んぼの魅力です。「関東圏で一番近い体験農業ができる場所だから」と言って選ぶ方も多いそうです。埼玉高速鉄道へ直通の東京メトロ南北線・東急目黒線からダイレクトにアクセスできます。
もちろん、浦和美園在住の人にとっても魅力的なのは間違いありません。特に、浦和美園は、駅の東側(マンションなどが立ち並ぶ地域)と西側(見沼田んぼがある地域)の交流が少ないというのも地域の課題としてあります。MFCをきっかけに、両者が交流できる場になると、もっと浦和美園という街の魅力が増えることでしょう。
既存の体験農園ではできない取り組みを
「既存の体験農業では、農家さんが畑で作る野菜や作物をあらかじめ計画していることが多いかと思いますが、MFCの場合は参加する人になるべく主体的に関わってもらおうと思っています。私たちスタッフも一緒に考え、失敗したり工夫したりしながら、『なぜこうなるのか?』を考えながらやっていきたいですね」と小林さん。
また、新しいビジネスの可能性として「これまで農作業に関するデータというと、気象条件とか作物の生育状況や管理内容などが主なものでしたが、『農作業をやっている人がどうやったら幸せになれるか』といった指標はありませんでした。
土いじりをするとセロトニンやオキシトシンがでるなど、脳の幸せホルモンが分泌することはわかっていますのでそうしたことをデータ化していければということなのです。これらは、将来の社会課題を解決するための投資としてやっていけたらいいですね」
「せっかく畑に来たのだから、ゆったり楽しんで過ごしてほしい」。効率重視で様々なストレスを感じている方、ぜひ一度M F Cの農業体験、試してみてほしいです。