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辻󠄀の獅子舞が世代をつなぐ。「お盆や正月よりも、獅子舞がハレの日」 ~辻󠄀の獅子舞保存会会長 清水隆明さん~

2017.06.06

5月14日に鷲神社で開催された、南部領辻󠄀の獅子舞。かつては、家督を継ぐ長男だけが舞い手となることができたのですが、現在では南部領辻󠄀の住民であれば誰でも担い手となることができます。今回は「辻󠄀の獅子舞保存会」会長の清水さんのご自宅にお伺いし、取材させていただきました。

Q:南部領辻󠄀の獅子舞が今年も5月に開催されました。竜の頭のような独特の獅子舞ですね。

そうですね。舞方は三頭で、女獅子、中獅子、太夫獅子の順で舞います。いずれも頭(かしら)が竜の顔立ちで「竜頭の舞」ともいわれているんです。頭髪は長い羽根を腰まで垂らし、腰には直径36cmの桶型の大きな太鼓を付けています。低い体勢で地を這うように、また、竜が天を舞うように、華麗で激しく勇壮な舞が特徴です。

Q:かつては、長男だけが参加資格があったとか。清水さんが参加されていたときのことを教えてください。

私が参加したのは、昭和28年の8月ですね。昔は10年一区切りで、家督を継ぐ長男に限って獅子舞を継承していたんですよ。そのときは世話人っていう昔の長老みたいな人がいましたからね、そういう人に習ってやっていました。私たちが獅子舞を習ったときは、8月のわずか1か月で全工程を覚えていました。獅子が3頭いるから、笛方は笛方、舞い方は舞い方で3つに分かれている。3頭それぞれの師匠が、代表になって教えているんですが、別々だから何をやっているかわかんないんです。それが9月の奉納のとき、神社で初めて手合わせすると、ピタリと合う。昔の人の教え方が凄いということですね。今じゃこんなことはできないです。それにしても8月だから暑くて(笑)パンツ一つで踊ったんです。太鼓も練習用のものなんて当時は無かったですから、代わりに手でお尻をはたくんです。腫れあがるくらい赤くならないと、太鼓の打ち方が弱いということだから、認めてもらえなかった。だから習う人は真剣でしたよ。当時、一番若い人で中学2年生くらい。10年一区切りですから、15歳で舞うということは、26歳になったら指導する方に回ります。こうやって次の担い手に伝えていました。

Q:まさに、獅子舞が世代をつないでいたのですね。

私がやっていたころは朝8時くらいから準備し、午前中に神社で奉納の舞をし、午後から家々を回るわけですよ。先頭は猿田彦(さるたひこ)という天狗が先導します。お宝持ちといって御幣(おんべい)を持つ人が3番目で、それを守る弓を持った人が2番目にいます。そのほかに、花笠の笛方2名、簓(ささら)2名、そして獅子3名が続きます。1戸1戸ですから全戸回っていると日付が変わってしまうんですよ。夜でもよその地区から多くの客が来て、それは賑やかだったんですよ。獅子か来るときは、縁側に座布団を敷いて家族で待っているんです。独立して家を出た子どもや嫁に行った娘も親せきもみんな集まる。獅子舞が一番の憩いの場だったんです。つまり「お盆や正月よりも獅子舞」なんです。餅をついて、大福をこしらえて、重箱に入れて…「今日は獅子舞ですからぜひ来てください」と。嫁に行った娘もその日は大いばりで実家に帰ることができるんです。

実は、昭和23年、戦後まだ食べ物が十分にない時代にNHKラジオで南部領辻󠄀の獅子舞が放送されました。ラジオですよ。映像なんてありません。だけど流れる笛と太鼓、簓(ささら)の音、すぐに分かりました。頭から離れない、忘れられない出来事です。その時の記念写真がこれなんですよ。昭和23年だから着ているものが違うでしょ。花笠の花はこの当時の方がきれいですよ(笑)。ラジオ放送はこの時の1回だけです。

それほど大切な獅子舞だったのですが、時代の変化には勝てなかった。南部領辻󠄀だけではないですが、農家から勤めに出るという流れが増え、昭和35年過ぎから少子化のため跡を継ぐ者が減ってきました。そして昭和44年を最後に自然と開催されなくなりました。

Q:時代の流れだったのですね。それが復活したきっかけを教えてください。

昭和55年に野田小学校の落成式にて、市長から依頼を受けて披露しました。その後平成7年に民家園の竣工式でも舞を披露しました。その時は2回とも氏子の登板で参加しました。すると、地域の方から復活の声をいただきまして、平成11年に「南部領辻󠄀の獅子舞保存会」が発足したのです。自然消滅から約30年が経っていました。現在は5月と10月の年に2回、15日に近い日曜日に鷲神社で奉納を行って、5月は地域の家々を組単位で獅子舞が回ります。今でももちろん「辻󠄀の獅子舞」は一番のハレの日です。こういうと地域の祭りのようですが、舞い手にとっては、観客は神様です。一人でも多いほうが張り合いがあります。「遠くから電車賃かけて見に行ったらつまんなくてがっかりしちゃったよ」なんて言うんじゃ、申し訳ないですからね。「良かった、この獅子舞はすばらしい!来年も来よう」と帰っていただければ舞い手としても主催者としても最高の喜びですよ!お待ちしています。

Q:ありがとうございます。最後に、現在の活動について教えてください。

今では、南部領辻󠄀に住む人で獅子舞に参加したいという方であれば、誰でも活動をすることができます。今は笛方が7名、太夫獅子が6人、女獅子が4人、中獅子が4人おりまして、太夫獅子と中獅子の両方舞う方もいます。簓(ささら)は獅子の方がやります。練習はお盆と正月以外年中行っています。昔あった「跡継ぎだけ」という制限は今はありません。女性でも笛方として参加できます。昔は完全な「タテ社会」でしたが、門戸を広げて地域のみんなで次の世代へと伝統を受け継いでいきたいと思っています。参加をお待ちしています。